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 2016/6/30
【ピカソを見出した伝説の画商ヴォラール】

 11月6日(日)まで今泉記念館アートステーションで企画展「ピカソ展 知られざる最高傑作」が開催され、ピカソ初期の最高傑作の一つと言われている『サルタンバンク・シリーズ』をご覧いただけます。
 なぜ「知られざる」なのか…それは、当時少数のみ刷られたもののほとんど売れることなく、放置されていた作品だから。そこで登場するのがヴォラールです。

 アンブロワーズ・ヴォラールは19世紀末から20世紀初期のフランスで最も重要な役割を果たした大画商であり、近代美術の立役者と言われています。それはセザンヌ、ドガ、ゴーギャン、ゴッホ、ルノワールら、今では巨匠と呼ばれている画家たちを、その類稀なる審美眼と先見の明を持って、まだ無名の頃から支援したことや、画家の評価を上げる(商品価値を上げる)高いプロデュース力からです。彼がいなかったら、無名のまま終わっていた画家もいると言われている程です。
 彼は法律を学び学位も取得しましたが、その後画商に転向しました。1893年に当時美術市場の中心地だったパリのラフィット街に自分の画廊を持ち、最初にマネの大きな個展を開催した後、ゴーギャンやゴッホの展覧会を開催しました。
 また、彼の偉業はセザンヌの回顧展を開き、まだ知られていなかったセザンヌを「近代美術の父」にした点です。ピカソはセザンヌに大きな影響を受けていますが、ピカソが観たセザンヌの個展もヴォラールが開催したものです。ピカソはセザンヌの絵を収集していましたが、セザンヌの絵を扱っていたのもヴォラールの画廊。ヴォラールがいなかったら、ピカソの画風も大きく変わっていたかもしれませんね。

 ピカソもヴォラールに才能を見出された画家の一人です。ヴォラールは早くからピカソを認め、1901年にはピカソ初の個展を開催しています。
 そして、1913年に長い間放置されていたピカソの「サルタンバンク(旅芸人)」をテーマにした一連の銅版画に芸術性を見出し、原版を買い取り、版潰れを起こさないようメッキ加工した上で、『サルタンバンク・シリーズ』と題し250部の限定版として売り出したのです。

 当初刷られたのはわずか30部程で、ピカソが大部分を友人に贈呈しましたが、今ではほとんどが美術館所蔵となり市場に出ることはありません。今回の企画展「ピカソ展 知られざる最高傑作」の展示は、1913年に新たに刷られた貴重なもので、ヴォラールがいなかったら世に出ることはなかった、まさに“知られざる最高傑作”です。
 今日このシリーズはピカソの版画を代表する作品であるとともに、版画史上においても不朽の名作として高く評価されています。
 本展は9点もの『サルタンバンク・シリーズ』を一同にご覧いただける貴重な機会です。この中には、ピカソ初めての本格的な版画である『貧しい食事』や、ピカソ初めての挿絵となった『2人のサルタンバンク』もあります。この機会をお見逃しなく!

 
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